大商人

偉人・芸能人

仏典には、こんな話が載っている。

お釈迦様の弟子に、

阿難(あなん)というイケメンの弟子がいた。

とても、いい男(イケメン)だったので、

彼が、説法をすると、多くの女性が押しかけてきた。

ある日のこと、

いつものように阿難の説法には大勢の女性が集ってきた。

そして、説法が終わると、

一人の女性がお礼にと、高価な布を、阿難に差し出した。

すると、次の日から、阿難が説法をするたびに、

女性達は競い合うようにして、次々と阿難に高価な布を提供したのだった。

やがて、その出来事が、国の王様の耳に入った。

王様は激怒した。

なぜなら、女性達が阿難にあげていた布は、

もともと王様が女性達にプレゼントした布だったからです。

王様は、さっそく阿難を呼び出します。

「女たちから布をもらったのは本当か!」

阿難

”はい、いただきました。”

王様

”仏教では、物欲を禁じているはずだ。いくら説法のお礼だからといって、

 女たちから、高価な布をたくさんもらうのは、仏教の教えに反することではないのか。”

阿難

”布は、わたしひとりが独占するものではありません。”

”お釈迦様には、大勢の弟子がおります。

 弟子達が新しい衣服をつくれるように、分け与えております。”

王様

”では、新しい衣服を作るのであれば、それまで着ていた古い服はどうするのだ?”

”捨ててしまうのか?

 たしか仏教では、物を粗末に扱うことを禁じているはずではないか。”

”仏教の教えに反する行為だろう。”

すると。。。

阿難

”もったいないので、古い服は下着に作り替えます。”

王様

”では、それまで使っていた下着はどうするのだ! 捨てるのか?”

阿難

”いいえ、もったいないので、縫い合わせて布団(ふとん)にします。”

王様

”では、それまで使っていた布団はどうするのだ。捨てるのか?”

阿難

”いいえ、もったいないので敷物にします。”

王様

”では、それまで使っていた敷物はどうするのだ? 捨てるのか? ”

阿難

”いいえ、もったいないから雑巾(ぞうきん)にして使います。

王様

”では、それまで使っていた雑巾はどうするのだ。捨てるのか?”

阿難

”いいえ、もったいないので、

 細かく刻んで家の壁をつくる際に、泥に混ぜ込んで使います。

 そうしてつくられた泥壁は、とても丈夫な壁になります。”

王様

・・・・・・・・・・・・・。

話し変わり、

むかし、大阪に、一組の夫婦がいた。

貧困を克服し、力を合わせ 大商人への道を歩んだ夫婦のはなし。

ふつう、貧困を克服すると、困窮時代を忘れ、贅沢(ぜいたく)に走りがちです。

いわゆる、成り金(なりきん)というやつですね。

しかし、この夫婦は違った。

どんなに店が大きくなり繁盛しても、

あいからず夫は、率先垂範、店先に立ち、誠実に仕事に励んだ。

そして妻の心がけも見事だった。

ふつう、女性なら宝飾品や衣服に心が揺らぐこともあると思うのだが。

まったく目もくれず、家の中を笑顔で切り盛りしていた。

ますます夫婦の店が繁盛するのも当然だった。

夫は、妻の内助の功に感謝し、

すこしは、衣服を新しくしてはどうか?とすすめるのだが、

妻は、

「昔を思えば、ぜいたくは言っておれませんよ。」と、笑って話すばかりだった。

愛妻家の夫は、

度々、この話を持ち出すのだが・・・・・。妻の返事は いつも同じだった。

そんなある日、妻は、

「やはり、わたしも女です。ほしいものはあります。(笑)

 じつは、あなたに だまってこっそりと、こしらえて

 タンスの中にしまってあるんですよ。(笑)」と、話した。

夫は、「そうだったのか。。。」

ちょっと がっかりした。

すると、妻は、少々落胆気味の夫にむかって、

”ぜひ、わたしが新調した衣服を見てほしい。”と言った。

さっそく夫は、妻に言われるまま、タンスを開けてみる。

すると、どこにも新調した衣服など見当たらなかった。。。

??????

ただ。。。見なれない文字の書きつづられている紙が何枚か入っていた。

???????

不審に思っている夫に、妻は言った。(笑)

「じつはね。今朝もね、店の前を通る女性の衣服が あんまり美しくって、気に入ったので、さっそく、二つ 三つこしらえてみたの。

 だけど、苦労した昔を思うと、とても着られず、またタンスにしまって置いたの。

 わたしは、心に衣服を着るの。

 だから紙に名さえ書いておけば、現物があるのと同じことなの。」

夫は、妻に感謝した。

そして、思った。

”夫婦の幸せというやつは、あんがい近くにあるものだ。”

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