「長生き」したいなら室温18度以上!冬の死亡率最低が北海道である理由。
冬の死因の6割を占めるのは、脳心血管疾患や呼吸器系疾患である。
というと、寒冷な地域で脳梗塞や脳出血、肺炎などを発症して死に至るというイメージがあるかもしれない。
つまり、日本最北端に位置する「北海道」では、冬の死者が増えそうだが、意外にも夏と比べて冬の死亡率が最も低い都道府県が北海道なのだ。
北海道をはじめ青森県や秋田県、新潟県、石川県、山形県など寒い地域は、暖かい季節と比較して冬の死亡率が10~15%程度の増加。
一方で、比較的温暖なはずの栃木県では、夏よりも冬の死亡率が25%も高くなる。
そのほか愛媛県、静岡県、鹿児島県など、やはり暖かい地域では冬の死亡率が20%も上昇している。
国別に見ても同様の傾向で、寒い国と暖かい国では2倍程度、死者数に違いがある。
例えば、ヨーロッパで寒冷なフィンランドは冬の死亡率は10%増程度だが、温暖なポルトガルは28%も死者が多くなるのだ。
「原因は家の寒さです」
慶應義塾大学理工学部の伊香賀俊治教授が指摘する。
「寒い県ほど家を暖かくする対策がとられ、室温が保たれていることが影響しているのです」
「室温」と「健康」の関係をいわれても、ピンとこないかもしれない。
しかし実は“寒さ”に関する法規制がないのは、先進国の中で日本くらいなのだ。
日本エネルギーパス協会代表理事で、海外の住宅事情に詳しい今泉太爾氏はこう話す。
「諸外国では過度な寒さは基本的人権を侵害しているという認識があり、だいたい18~21度の最低室温に関する基準や規制があります。
英国では18度以下の賃貸住宅には解体命令が出ますし、寒い家に住んでいる人の保険料は病気の発症リスクが上がるため掛け率が上がりやすい。
例えば刑務所であっても、過度な寒さは人権問題となるので、設計段階から暖房計画をきちんと考えます」
日本には「耐震」に関して、世界で類を見ないほどの厳しい基準がある。
一方で「室温」には長らく目が向けられてこなかった。
旧厚生省医系技官として8年間勤務したことのある東京都立大学名誉教授の星旦二氏は、「これまで住宅は経済の観点ばかりから見られていた」と嘆く。
「質ではなく戸数が優先されてきました。県ごとにこれだけの死亡率の差が生まれたのは、家と健康を結びつけて考えなかった国の責任でしょう。
ヒートショックやシックハウスの対処も大幅に遅れ、住宅ローンが終わる頃には資産価値のない住宅がその後ゴミの山となっています。国民は健康負債と資本負債に翻弄されているといっても過言ではありません」
WHOは冬の室内温度「18度以上」を強く勧告
冬場の暖房の効いた居間と、冷えたままの廊下やトイレなどとの温度差は、戸建の場合で15度ほどあるという。
夜中に目が覚めて温かい布団から抜け出し、トイレに行こうとして心筋梗塞や脳梗塞を発症して死亡するケースも少なくない。急激な温度変化は体にかなりの負担をかけるということだ。
それでは室内を何度にしたらいいのか。
それはずばり、18度以上だ。
実際、WHO(世界保健機関)は2年前に、「冬の室内温度として18度以上」を強く勧告している。18度を下回ると循環器疾患、16度を下回ると感染症などの発症や転倒、怪我(けが)のリスクが高まると指摘しているのだ。
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